森田洋平 理学博士

 WWWとの出会い

 私が初めて「WWW」という言葉を耳にしたのは1991年9月のことでした。 高エネルギー実験のソフトウェア担当者の会議がアメリカ・ダラス郊外で 開かれたのですが、このときCERN研究所(スイス・ジュネーブ)から来た 研究者が「ハイパーテキストで自由にネットワーク上の書類を見ることが できる仕掛けをCERNで作ったよ」と宣伝していました。
WWW以前にインターネットで流通していた情報はテキストが主体で、 ちょっとした情報を手に入れるにも複雑なコマンドを覚えたりする必要が ありました。また情報の流通経路も、相手の計算機に直接ログインしたり、 途中の計算機に情報を中継してもらったり、複雑な手続きが必要でした。 WWWはこのような複雑な手続きを「リンクをたどれば情報が手に入る」 という簡単かつ直観的な概念に置き換えた、という意味で、まさに コロンブスの卵のような発想でした。

 その後、1993年から1995年にかけて、MosaicやNetscapeなど、高機能で使い やすいブラウザが登場したことでインターネットが爆発的に成長し、世界の 新しい情報通信の基盤となったことは皆さんご存じの通りです。
研究会の席上でWWWの説明を初めて聞いた私は「便利な道具ができたなぁ」 と思い、KEKに帰ってから同僚に報告しましたが、その時はまだKEKに WWWを導入することは思いつきませんでした。