Web開発の歴史 - 私とWorld Wide Web



 WEBの設計に影響をあたえたもの

質問: どのようにしてWWWの発想にたどり着いたのですか?

 私がWebにたどり着いた理由は、"Enquire"(IではなくE)プログラムが実生活で出会う全 てのランダムなまとまりを記憶しておくのに本当に便利である事に気付いたことと、脳は 記憶が得意であるにもかかわらず私の脳は時折そうでなかったからです。この"Enquire" とは"Enquire Within Upon Everything"の省略で、あらゆる事に関していろいろ有効なア ドバイスがいっぱい詰まったそういう名前のヴィクトリア風の(?)書物から名付けまし た。それは非常に単純なものでしたが、アイデアが結びついた時とか、異なったプロジェ クトが相互作用を起こす時に構築されることがあるまとまりを記憶する事が出来ました。

 私自身もEnquireを使用し、以下の2点に気付きました。それは、(a)Enquireは、他人 がデータを手にした場合、私がやっていることを説明する私の世界に対する義務を果たし てくれるということと、(b)他のプロジェクトの設計者がEnquireを使用し私がそこへア クセスしさえすれば、私が利用するかしないかは別として、その研究室での他のプロジェ クトをチェックする事が出来るということです。

 現在、第一版のEnquireでは、あなたが一つのファイル内のノード間をリンクさせるのと同 じくらい簡単にファイル間(一つのファイルシステム上で)をリンクさせることができま す。(それは一つのデータベースファイルにたくさんのノードを蓄積していたのです)。 第二版、つまりNORDからPC、そしてVMSへとつなぐポートは外部への接続は出来ません。

 これは弱点的な問題を立証してしまいました。データーベースの封じ込みを強要されるこ とは非常に退屈で、効果的ではありませんでした。ハイパーテキストに関する重要点は、 (多くのプロジェクトマネージメントやドキュメントシステムとは異なり)ハイパーテキ ストが、私が(きっとCERNも)承知している現実環境の特徴である関係の変わりゆく難局 を模擬実験できる点です。別個のボックス内でのリンクのみがそうしたものを消滅させた のです。人はソフトウェアのドキュメンテーションから、人名簿へ、電話帳へ、組織図へ と、とにかく今日Webで出来るあらゆるものへとジャンプ出来なければなりませんでした。 テストルールとは、もし私が他の2つのプロジェクトにそれを使うよう説得し、彼らがそ れを用いて自分達のシステムを説明し、のちに一つのプロジェクトに関わるモジュールな り人物なりが他のプロジェクトから何かを利用したなら、あなたはリンクを加える事がで きることになり、2つのWebはグローバルな変化なしにひとつになるということです。すな わち2つのWebは、2つのデータベースをひとつにするための「旗の日」もなく、接続数の 増加に比例する問題もなくひとつになるということです。このためにW3が設計されました。

 これと同じ教訓は、今後我々がリンクされた証明書で構築する信頼のWebにも当てはまるのです。

 ですから「外部」へのリンクは「内部」のリンクを作るのと同じくらい簡単であって欲しい と言う要求があったのです。これはリンクがワン・ウェイでなければならない事を意味し ました。

 (Webがごく簡単にリンクを増やすことができるようにとの要求もありましたが、それはプ ロトタイプでは正しいのですが、我々は優れた市販用のWeb編集プログラムのベータが分か り始めたばかりなのです。)

質問:何によってWWWを思いついたのですか?

 私は、脳と同じような方法で情報を示すたくさんのプログラムに手を出していました 。初期のプログラムにはあまりにも抽象的で絶対にデバッグできない様な混乱を招いていた ものもありました。もう少し実用的なプログラムとしては、CERNに入った時に個人的な用途 に作ったハイパーテキスト・ノートブックがありました。私がそれを必要だと思ったのは、 システムの新しい部分と人間とモジュールが加えられ結合される方法、つまり何て言うのか な、柔軟的?な創造的?な方法を記憶させておくためでした。WWWに着手する少し前に私が 携わっていたプロジェクトはリアルタイムの遠隔処理電話であった為、それが私に多少のネ ットワーキングの背景を与えてくれました。イメージ・コンピューター・システムズはテキ スト処理とコミュニケーションに関して本当に多くの功績がありました。私はCERNに来る前 はディレクターでした。

質問:あなたの経歴や性格のどのような要素が、CERNで起きていたことを記憶させる手 段としてのWWWを思い付くのに役立ちましたか?

性格の要素ですか?! コンピューターを使っていると時間を忘れてしまうような人  なら誰でも、夢を見る傾向や夢を実現させようとする衝動や昼食を抜く傾向などを体験し ていますよね。前者二つが一助となったのではないかと思います。そのような人たちを「 注意力欠乏障害」と呼べるのではないでしょうか。

 もし、良い商品なら人は買いたいと思うでしょうし、お金は自分が欲しいものを 選ぶ手段となります。そのようなシステムが我々にとって一番だと信じますし、もしそれ が正しければ、人はきっとお金を稼ぐようになるでしょうね。ソフトウェアを作ったり、 情報を売ったり、さらに重要なことにあらゆる種類の「現実的」なビジネスをしたりして お金を稼ぐでしょう。そうなれば、Webがそうした仕事をもっとやり易くしてくれるわけ ですから、さらに効率よく事が進むようになるでしょう。Webは紙のようなもので、あな たが何にWebを利用しようとも束縛はしないのです。ですから、通常生活に氾濫している すべての情報に関してWebを利用できるようにならなければなりません。

 私にとって最も重要なことは、Webが今後ずっと私たちの役に立つように発展、展開して いくことを見届けることです。もし、私もしくはCERNにそのような姿勢がなかったら、お そらく現在Webはなかったと思います。

 今、例えばネットワーク・プロトコル上の所有権のあるものを変形しようとするなどして 、誰かがもしWebを独占しようとするならば、私は悲しいです。